催眠療法から見た慢性疾患の心身相関性と治癒
英語の勉強やプレゼンテーションの教材として使われる TED Conference(TED:Technology Entertainment Design)。
今回の講演者はアメリカでトラウマや慢性疾患に対して催眠療法を実施するヒプノセラピスト、DANNA女史の話。
講演者によると、人は生まれてから6歳までの意識は、トランス(変性意識)状態にあり、自分自身に起きる沢山の事象を “スポンジ” のように取り込んでいくと説明しています。
そして、その間の無意識は本来は中立である出来事に対して、様々な意味づけ・解釈を行い、その後の人生において思考や行動のパターンを形成していきます。
そして、時として、無意識の中に形成されたそのパターンは本人にとって望ましくない影響を与えます。
具体的に挙げると、
- 肉体の各種疾患
- 気分の落ち込み、うつ病(depression)
- 肥満(obesity)
等。
そして、実例として彼女自身の体験を話します。
彼女が18歳の時、”慢性疲労症候群(chronic fatigue syndrome: CFS)” を患っていたようで、その後、線維筋痛症(fibromyalgia)を発症します。
そして、数え切れない程の医者を訪ねましたが、いずれも彼女にはストレスと憂鬱感しか与えなかったようです。
それとは別に生活スタイルを変えるとか、ダイエット等、自分で出来る事も試しましたところ、徐々に症状は改善していき、彼女自身も自分の健康は自分でコントロールできると思いました。
そんな中、今度は交通事故が彼女の身に起こり、それは心理的に彼女を打ちのめして(knock down)しまい、これをキッカケに彼女はPTSD(外傷後ストレス障害:Post Traumatic Stress Disorder)を患います。
そして、その治療のために、ある女性ヒプノセラピストを訪ねましたが、その時の彼女は催眠療法に関する知識は持っておらず、むしろ懐疑的な印象しか持たなかったようです。
セッションを開始して、6ヵ月後、彼女のPTSDの症状は消えると同時に、線維筋痛症(fibromyalgia)による筋肉の痛みも徐々に改善されたと語っています。
話題は戻り、彼女は心身相関性について解説します。
人は何かショックな事、経験を体験すると、それは脳を通じた神経系を伝わり、
- 免疫システム
- 内分泌系
に影響を及ぼし、アドレナリン(Adrenaline)やコルチゾール(Cortisol)といった “ストレスホルモン” の分泌を促し、最終的には体の内部の各所で炎症(inflammation)を起こします。
こういった体内の変化は無意識的にコントロールされていおり、引き金となった出来事が記憶の中で生き続ける限り、免疫系のレベルは低下する一方で、ストレスホルモンの分泌は続き、やがては慢性的な肉体の疾患へに繋がることになります。
人は一度、ショッキングな出来事に遭遇すると、本来は中立である出来事に対して様々な “意味づけ” を自動的に行い、その意味付けの記憶は永遠に脳の記憶として保持されます。
そして、その記憶は同時に免疫系や内分泌系に影響を及ぼし続けることになり、やがては慢性的な疾患として本人が気付く状態に至ると説明しています。
では、その過程を修復するにはどうしたらいいのでしょうか?
その方法の一つとして、
「免疫心理学」
という研究分野が存在し、具体的な治癒の手段として、講演者が実施しているのが、
「催眠療法(Hypnotherapy)」
で、其の中でも、特に注目したのが、
「退行催眠(Regression Therapy)」
との事。
すなわち、催眠によりクライアントに望まない身体反応を起こした最初の出来事を思い出させ、視覚化(Visualization)を促すものです。
例えば、クライアントが二歳の時、その両親が夫婦喧嘩をしていたとします。
この子供の時のクライアントはどういった感情を持つでしょうか?
「動揺」「混乱」「両親になんとか働きかけなければならない」等、いろいろあるでしょう。
この二歳の時に退行したクライアントに、セラピストは次のような質問を投げかけます。
「その時、あなたはどのように感じましたか?」
今は大人になったクライアントに対して、その時に必要であった、いろいろなリソース(Resource)を語るよう促します。
そして、それを口にした途端、クライアントの無意識下での治癒が始るそうです。
古典催眠は勿論の事、NLPでもしばしば登場する、
「人は過去に起きた出来事は変えられないが、心の中でどう認識するかは変えることができる」
“You cannot change what has happened to you in the past. Instead you’re changing mind’s perception and the weight of the heavy feelings that the past memory holds.”
という考え方です。
もう少し具体的に言うと、無意識に対して “その出来事と戦う必要はないのだ” という “許可” を与えると、体の神経系がリラックスし、さらには内分泌系の特に外部に対して常に臨戦体制であった状態(アドレナリンやコルチゾールなどのホルモン分泌)が緩和されることになります。
具体的な例として、演者が実際に会った減量を目指す女性の例。
(どうやら海外では減量のために催眠療法を受ける人が多いようです)
セラピストである演者が尋ねて来た女性に聞くと、彼女は、
「減量のためにジムに行こうとすると、体に痛みを感じる」
という事。
さらに演者が “具体的に体のどこに痛みを感じるのか?” と尋ねると、
「肩だ」
と答えます。
そして、演者がクライアントに対して、退行催眠を開始すると、クライアントは12歳の時、兄とケンカして、その兄は12歳のクライアントを階段から落とし、その後、数週間、クライアントの肩は動かなかった事を思い出します。
その出来事から10年後、クライアントが二十歳になった時、再びその肩の痛みがぶりかえします。
そして、セラピストである演者の退行催眠により、肩の痛みの原因となった出来事(トラウマ)を思い出した途端、その痛みは消失したとの事。
最後に演者は、
「心身相関性」
について強調し、どんな人もちょっとした手助けをする事で、長年悩まされた慢性疾患(PTSD等)を自分自身で治癒することが可能であると言っています。
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