人間の行動は “常に合理的である” とは限らない

今年 2017年のノーベル経済学賞の受賞は、アメリカ シカゴ大学のリチャード・セイラー教授に決まりました。

“行動経済学” という言葉自体、耳慣れないかも知れませが、一言で言えば、

「心に着目した経済学」

で、要は、規模の大小に関わらず、人間の経済活動に関して、

「儲かるか?損をするか?」

の決定の過程に、心理学を応用した分野であると言えるかもしれません。

この分野では、”プロスペクト理論” を提唱したダニエル・カーネマン氏が有名で、人がFXや先物取引などにおいて “大損してしまう” 理論を人の心理学や認知科学の視点から構築した人物です。

世間一般では、”お金には色はない” という事から、汗水たらして稼いだお金と、ギャンブルなどで一発当てたお金が同額であったとしても、価値としては両者とも同じものの、前者の方法で得たお金は大事に活用する傾向があります。

今回はセイラー教授の提唱した “ナッジ理論” と呼ばれるものに対する授与でしたが、ここで言う “ナッジ” とは “軽くつつく” という意味で、人間が “合理的な判断” をするには “他者から軽く叩いてもらう(ナッジする)” 必要があるという内容のようです。

“行動経済学” という分野は、まだまだ玉石混合の状態であり、いろいろな様々な研究が行われていますが、その分かりやすい例として、次のものが挙げられるかもしれません。

ある日の事、スーパーに行くと “ジャム” を買う必要がある事を思い出してジャム売り場に行くと、そこには二種類のジャムが陳列されています。

ここでジャムを買う場合、並べてある二種類のうち、どちらかを選択するだけで目的を達する訳ですが、もし、並べてあるジャムが何十種類もあり、その中から一つを選ばなくてはならないとすると、最悪の場合、選ぶ事だけでウンザリして、ここでは買わずに、別の店で購入するかもしれません。

この例は、行動経済学の本で度々例に出されるスーパーで実際に行われた実験で、今まで三種類だしか置いてなかったジャムの種類を増やしたところ、売り上げは伸びるどころか、逆に減少してしまったという結果が得られています。

一見、科学的な手法で解析が可能で、将来の動きも予想できそうな経済市場も、人間の “不合理な判断” の塊であり、その五分後の動きさえ予想が不可能であり、

「世の中には絶対に儲かるという方法は存在しない」

という言葉の根拠の一つに、この行動経済学があるのでしょう。

従来の経済学では、

「人間は常に自分の利益を最大化するように意思決定する」

というものを大前提にして、”金融工学” という複雑な数式を用いて市場の動きを捉えようとしていますが、それが上手く働かない、或いは、世界各国の金融政策が思惑通りの結果を示さないのは、まさに人間の “心の動き” というものを完全に排除していることも要因の一つかもしれません。

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