体(もしくはその一部)を使って心的状況を変える
NLPや催眠療法のセッションの実際の場を見てみると、静かな環境の部屋でセラピストもクライアントもソファーなどに座ってリラックスした雰囲気でセッションを行う、というケースが殆どたと考えられますが、その一方で、体を使ってクライアントの心的状況を変える、というアプローチも考案されているようです。
私がこの可能性に興味を持ったのは、今から何年も昔の話になりますが、
「脳を鍛えるには運動しかない! 最新科学でわかった脳細胞の増やし方」
ジョン J. レイティ,エリック ヘイガーマン NHK出版
を読んでからです。
その中の一節に、著者らはアメリカの医者でうつ病の治療にあたっていたようなのですが、その彼がヨーロッパのうつ病治療の現場を視察した時に、薬物治療が主であったアメリカ国内とは異なり、臨床医は、
- 薬物治療
- 毎日の運動
のどちらかを選択するプログラムが確立しており、病院側も深刻なうつ病患者に積極的な運動を勧めて、しかも効果が出ている、という記述を目にしてからです。
この本の日本語翻訳が2009年に出ていますから、少なくともそれ以前に体を動かすことによるうつ病の治療方法が確立されていたものと考えられるでしょう。
これは、うつ病の場合でしたが、その他の心に関する問題へのアプローチとしては、このブログでもいくつか紹介している、EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)が挙げられるかと思います。
原因は明確には把握できないけれど、日常生活において不安に苦しんでいる時には、医者の処方する薬の他に、体の一部を使う簡単なエクササイズである、
- 筋肉の緊張を解く(眼球の奥に力が入っていないか?歯を噛みしめていないか?)
- 呼吸をする時に、吸気ではなく吐息に意識のフォーカスを合わせる
という簡単なものでも効果があると紹介している書籍もあります。
そして、人間が表現できる特徴の一つである、ある動作が経験的には一番効果があるらしく、それが、
「笑い」
だそうで、文献が示されていないので客観的証拠には乏しいですが、一日に百回笑えば十分間ジョギングしたのと同じ効果が得られると主張している医者もいるとの事。
この方面で恐らく一番有名であろうと思われるのが、出版は1996年と多少古いものとなりますが、
「笑いと治癒力」ノーマン・カズンズ 著
ではないかと思います。
筆者は最初は現在のニューヨークポストでジャーナリストとして勤務しますが、その後、難病を発症し、著者独自が調べ上げた “笑い+ビタミンC” で完治すると、社会復帰後はカリフォルニア大学の医学部教授として活躍しました。
不安症などで本当に苦しい時には、
「笑っている場合じゃないっっ!!」
と思わず非難が出ると思いますが、ここで、活躍するのがNLP的なアプローチです。
メタモデルの中に “削除” という心の仕組みが登場しますが、不安で仕方ない人も、”過去一ヶ月の間、一秒たりとも笑ったことはない” という事はそうそう考え難いですし、あるいは、本人の心の奥底に “笑いというものはこういうものであるっっ!!” という確固たる価値観があったり、第三者から見れば明らかに笑っているとしか見えないにも関わらず、当の本人は “これは笑いではないっっ!!” と思い込んでいるケースもあるでしょう。
本当は笑った筈なのですが、脳のフィルターにより、その事実がゴッソリと削除されてしまうのです。
“笑い” というのは呼吸と同様に、意識的にもコントロールできる一方で、何かをキッカケとして、フト垣間見せる穏やかな表情で微笑むという動作は無意識的な行動であり、その微妙な変化に気が付くかがセラピストの腕の見せ所となるでしょう。
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