認知言語学とNLP (2)
「同一の出来事を異なる視点で話す」
NLPのスキルの一つとして、「クライアントが使う言葉のパターン」に注目するというものがあります。
言葉というものは、実際に口に出す以前のプロセスは無意識の部分で処理されるものであり、その言葉のパターンを注意深く観察することにより、相手の心の深層部分にあるビリーフ(信念・価値観)についての情報を得ることが出来ます。
例えば、このような例を考えてみます。
- 私は、今日、8時間のトレーニングを行った
- 私は、今日、8時間もトレーニングを行った
- 私は、今日、8時間しかトレーニングをしなかった
上の3つの文章は、どれも「今日のトレーニング時間は8時間であった」という同一の内容を述べていますが、どれも微妙に表現が異なります。
このように、同じ事態・状況を述べている複数の文は、認知言語学においては「真理条件的意味が同じである」と説明します。
今回の例の場合、「1.」の文章が、本人の状況を何も評価を加えていない事実を述べているものと考えられます。
一方、「2.」の文章は、クライアントは予定していた以上のトレーニングをこなし、会話のコンテクストにもよりますが、本人としては十分に満足し、ポジティブな状態にあると予想できるでしょう。
それとは逆に、「3.」の文章は、クライアントとしては不満足な結果であり、もしかしたらネガティブな感情を感じている可能性もあるかもしれません。
ここからは、認知言語学を超えて、NLP的なカウンセリング・コーチング時の戦略です。
もし、クライアントが「2.」の反応を返した場合、「そうですか~、8時間もトレーニングが出来たのですね。では、あなたとしてはこれからどのようなトレーニングを目指したいですか?」といった具合に、バックトラッキングしながら、クライアントの行動を未来にフォーカスさせるように誘導するのが一法でしょう。
一方、「3.」の場合には、「トレーニングの時間が8時間という根拠は何ですか?」「8時間のトレーニングをしないとどうなるのですか?」といったメタモデル的な質問とか、「8時間のトレーニング時間を確保するにはどのような方法がありますか?」という質問が考えられます。
「何故、8時間のトレーニング時間が確保できなかったのですか?」という、「原因」にフォーカスする質問をすると、人間の脳は「言い訳」を百も二百も考え出しますから、NLP的にはNGな質問でしょう。
また、「2.」や「3.」のクライアントの言葉の中には、NLP的視点に慣れているのであれば、何かしらの「前提」が隠されていることは明白でしょう。
セッションの中で、このクライアントが抱えている前提について深く探っていくのも一つのアプローチかもしれません。
もう一つ、認知言語学的に「真理条件的意味が同じ」であっても、それを捉える視点が異なる身近な例の一つです。
例えば、サッカーの試合のPK合戦。
AチームのキッカーのボールをBチームのキーパーがパンチングで防いだ場面。
この状況は
- Aチームのキッカーがゴールできなかった
- Bチームのキーパーがゴールを守った
という二つの視点が考えられます。
そして、この場面をパブなどで酒を飲みながら観戦している客を観察した場合、
- がっくりと頭を抱える客はAチームのファン
- バンザイして大喜びする客はBチームのファン
であると考えるのが妥当でしょう。
NLPのカリブレーションの基本テクがあれば、相手がAチームのファンであるか、Bチームのファンであるか、改めて質問しなくても、無意識的な動作により一目瞭然でしょう。
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