エリクソン催眠:簡単な試験で無意識領域にメッセージを届ける

「プライミング試験」

ジョージ・バーシュという心理学者が考案した試験(テスト)。

テストの内容は、対象となる被験者に簡単な言葉並べの試験を行ってもらう。

実際は当然のことながら英語の試験なのですが、以下は、英語と日本語がゴッチャにして書いています。

試験の内容は以下の通り。

例えば、

 「him, was, worried, she, always」

といった5つの単語がランダムに並べられていいるので、これらの単語を組み合わせ、かつ、並べ替えて、意味の通る文法的に正しい文章にしてもらう。

この場合の答えは、

‘ She always worried him. ‘
(彼女はいつも彼のことを心配していた)

この場合、’was’ は不要。

このような具合に、同様な文章を組み立てる試験を被験者に行ってもらう。
ただし、被験者には、試験実施の手順だけを教えて、この試験の本当の目的は伏せておく。

例えば、以下のような複数の文章を組み立ててもらう。
(当然、本来は英語の文章ですが、ここでは日本語で表記)

  • オレンジはフロリダ産だ
  • ボールを静かにトスしろ
  • 古い靴を履き替えなさい
  • 彼らは寂しいだろう
  • 空は灰色だ
  • もう私たちは撤退しなければならない
  • ビンゴ・ゲームをしよう
  • 太陽の光がレーズンをしわしわにする

本当に簡単なテストで、被験者は一体どんな意味があるのだろう?と思うかもしれません。

しかし、試験の「本当の目的」は違います。

この試験を終えた後の被験者の行動に着目すると、大抵の場合、試験後の足取りは重く、本人が意識していないのにも関わらず、まるで挙動は「老人」のように見えるかもしれません。

その鍵は、試験の文章に埋め込まれた単語にあります。

  • フロリダ
  • 古い靴
  • 寂しい
  • 灰色
  • 撤退
  • しわしわ

これらの単語が被験者の意識領域の抵抗をかいくぐり、無意識領域に到達し、これらの単語を受け取った無意識が年老いた状態をイメージし、それが被験者の現実の行動に表象されたとしています。

ジョン・パージ氏の場合は、純粋な心理学者ですが、現代催眠・エリクソン催眠を知っている人であれば、そのスキルである

  • メタファーの活用
  • クライアントの無意識に届けたいフレーズを会話の中で、微妙にアクセントをつける

といったものに関連付けることが出来るかもしれません。

さて、これには実際の例があり、パージ氏はニューヨーク大学の2人の同僚と共に、大学の学生を対象にある実験を行いました。

多数の学生を二群に分け、1つのグループには、

「強引」

「大胆」

「無礼」

「困らせる」

といった単語のフレーズ、

他方のグループは

「尊敬する」

「我慢強い」

「丁寧」

「礼儀正しい」

といった単語のプライミング処理を行いました。

そして、クラスを受け持つ教官と、その助手に協力してもらい、この2人が忙しく議論しているシチュエーションを実演してもらい、そこへ上記のプライミング試験を実施した学生に、教官に話しかけるように指示しました。

この実験を開始する前は、パージ氏らは、差が出るとしても微々たるもので、せいぜい秒単位程度の差しか出ないだろう、と予想していましたが、実際に試験を行った結果、上記の「我慢できない系」の単語でプライミングされた学生は、平均5分で教官と助手の議論を遮りましたが、もう一方の「我慢強い系」の単語でプライミングされた学生は、82%という圧倒的多数が10分経過しても、教官と助手の議論を遮らなかったと報告しているようです。

上記でも書いたように、当然のことながら、学生たちはプライミング実験、あるいは、その真の意図については全く知らされていません。

以上のようなプライミング効果の結果から、習得するのが非常に困難だと言われているエリクソン催眠・現代催眠の手法を、ある程度の催眠の知識があれば、簡単なテストを行うことで、相手の無意識に自分の意図するメッセージを届けることが出来る可能性があります。

名付けて「プライミング・ドリル(仮称)」

最初、ジョージ・バーシュ氏が考案したのを少し改変して、日本人なら義務教育時代からの馴染みがある5択式のドリルです。

例えば、

問題

  • 次の文章の空欄を埋めるのに、一番適当な単語を次の5つの中から選んでください

    「○○」は朝は東から登り、夕方には西に沈む

    1. たこ
    2. 鉛筆
    3. 太陽
    4. 牛丼
    5. 椅子

こういった、クライアントの抱える問題を解決するキーワードを含む文例を多数つくり、テストを繰り返していけば、クライアントの意識の抵抗を受けずに、無意識領域にメッセージを届けることが出来るかもしれません。

あとは、クライアントの意識的無意識が気付かないように、問題はバカバカしいほど簡単な方がいいかもしれません。

こういったものであれば、催眠の複雑な知識や技法を意識せずに、催眠療法的なセラピーが叶う事も考えられます。

あとは、言葉のパワーを知っている人は、例えば、上の例の「太陽」は、文化人類学的に日本語においてどういったメタファーと関連しているのか意識することにより、日本語を母国語とする人に対して特異的に効果的な手法が開発できる可能性もあるでしょう。

一方、このプライミング試験の弱点としては、

  • ネタを理解している自分自身のセラピーには原理的に実施不可能
  • 同時に、クライアントもテストの意図に気付かないことが必須
  • どのくらい、どの程度実施すれば効果が現れるかは不明

といったことが挙げられるでしょう。

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