クォーターバック問題:誰が優秀な選手になるか誰にも分からない
「NFLの選手は、なぜIQテストを受けるのか?」
NFLとは全米ナショナル・フットボール・リーグの略。
NFL各チームのスカウトマンは、自分のチームにスカウトし、将来活躍してくれそうな人物を探し出すために、様々な独自の活動を行っている。
特に大学のチームからスカウトする場合には、実際に試合会場へ足を運ぶのは当然のこと、家に戻っても試合のビデオを繰り返し観て、目を付けた選手が自分達のプロ・チームで優秀な選手として成長してくれるかどうか入念に検討を行う。
日本の一般的なサラリーマンの立場からすると目が飛び出るような大金でスカウトしたとしても、実際にプロ・リーグに入団した途端、泣かず飛ばずでは目が当てられない悲惨な状況になることがままあるからだ。
一番の理由は、大学リーグとプロ・リーグでは、試合の展開方法が全くといってよい程異なることにある。
いくら、大学リーグで優秀な成績をたたき出した花形選手でも、プロ・リーグで活躍できるとは限らない。
例えば、1999年のドラフトで全体指名一位を受けたクォーターバックのティム・カウチ選手は、ケンタッキー大学時代には、あらゆる記録を塗り替えた有名な選手である。
このカウチ選手は、フィールドにゴミ箱を五つ並べ、そのゴミ箱全てに正確にボールを投げ入れることも出来た。
しかし、そんなカウチ選手もプロの世界では全くの期待はずれであった。
当然のこととして、プロの世界におけるクォーターバックにもカウチ選手のような正確さが必要ではあるが、プロで必要とされる正確さとは、静止したゴミ箱に投げ入れる正確さではなく、実際の激しい動きの試合中に発揮され、評価される類の正確さである。
このように、選手の過去の実績が必ずしも未来の活躍に結びつくものではない、というのが「クォーターバック問題」である。
そして、このクォーターバック問題の難儀なところは、未来の活躍を予想する方法が見つかっていない、というのがまた、別の問題となっている。
そこで、このクォーターバック問題を解決すべく、NFLのドラフトの対象となった大学のクォーターバックの選手はIQテストを受けなければならない。
その理由は、プロでは大学の試合よりも高い認識力が求められるため、知性の高さがプロでの成功を予想する良い材料になる、と考えられていたからだ。
この点に関し、経済学者のデイヴィド・ベリとロブ・シモンズが、クォーターバック達のIQテストの成績の分析を行った。
その結果、IQテストの結果はプロにおけるクォーターバックの成績の判断材料としては殆ど役に立たないことが判明した。
そこまで仰々しく調査をしなくても、我々素人の考えでも、プロ選手としての優秀さと、テストの点数とは関係ないであろうということは何となく想像に難くない。
例えば、ある年のドラフトで指名された5人の大学チームのクォーターバックの中で、将来、殿堂入りが狙えそうな一人の選手は、このIQテストでは最も点数が低かった。
この選手と同じくらい点数の悪かった2人の選手は、後に、最高のクォーターバックと称えられるまでに成長した。
また、このベリとシモンズは、ドラフトにおける指名順位(すなわち、これは大学でのプレーヤーの実績に基づくランクの高さを表す)と、プロにおける活躍との間には関係がないことを発見した。
以上は、アメリカのフットボール界における問題でしたが、同じような「クォーターバック問題」は日本の企業にもあるのではないかと考えられます。
それは、新卒学生達の企業入社時です。
企業側としては、出来る限り「優秀で」「会社の発展に貢献してくれる」人材を求めていることは論を待ちませんが、ここでクォーターバック問題が持ち上がります。
すなわち、
- 企業は学生達の学校時代のテストの成績しか分からない
- 学生側も企業の仕事のイメージが掴めない
という問題です。
そして、企業側としては、上記と同様なクォーターバック問題の解決方法を採用しています。
それは、
- 有名大学を卒業している学生は、将来、優秀なビジネスマンになる(であろう)
- 何かしらのテストを実施し、その試験成績が良い学生は、将来、優秀なビジネスマンになる(であろう)
というものです。
しかしながら、現実を見てみれば、アメリカのフットボール界と同じような結論に至るのではないかと容易に想像がつくでしょう。
すなわち、洋の東西問わず、分野を問わず、
- とある個人がどんな分野に適していているか(才能を有しているか)、それを知る確立した方法などなく、その結果、誰にも分からない。
- その人の将来など誰にも分からない。(知る方法がない)
ということが言えるかもしれません。
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