心理状態が体力に及ぼす影響
例えば、田舎の地方の駅に降り、そこから、徒歩で何キロも先の目的地に行かなければならない時、あるいは、ハイキングや登山でもよいですが、黙々と歩いている最中、自分がどのくらい歩いてきたのか、あと、どのくらい歩かなければならないのかについて全く情報がない時、やたら疲労感を感じる時がありませんか?
そして、道端の標識に、「○○まであと2km」というのを目にすると、なんだか急に元気が出てくる経験があるかもしれません。
これは私たちが日常的な生活で感じる事例ですが、世界で行われている研究では、人間の持つイメージが体力や運動競技でのパフォーマンスに大きな影響を与えることが証明されているようです。
例えば、エルサレムのヘブライ大学の心理学者が行った、軍隊の行進に関する実験において、イスラエル兵士をいくつかのグループに分けました。
対象が軍の兵士であることから、一般人とは異なり、心理的にも強靭で、基礎体力も一定以上を有する、ある意味では、バラつきの少ない集団と言えそうです。
そして、グループ分けした後に、40kmの行軍を実施したのですが、その際、それぞれのグループに異なる情報を与えました。
その情報とは、
- あるグループには、まず、30km歩かせ、それから兵士たちに残りは10kmだと伝える
- あるグループには、60km歩くと伝える(ただし、実際に歩く距離は、他のグループと同様に40km)
- あるグループには、歩いてきた距離の標識を見せる
- あるグループには、どれほど歩いてきたのか全く分からない状態にしておく
というものです。
そして、行軍の終了後、兵士たちの血液中にあるストレスホルモンの濃度を測定したところ、そのレベルは、兵士たちの頭の中にあった距離の見積もりを反映しており、実際に歩いた距離とは関係のない、というものであったそうです。
すなわち、どの兵士たちも、「現実に」歩いた距離は40kmとすべて同一であったのにも関わらず、ストレスホルモンの量はグループごとに異なっていたことから、彼らの身体は現実ではなく、彼らの心の中に描いたイメージに反応していた、ということが推測されます。
以上は、肉体のパフォーマンスに対する心理状態が及ぼす影響ですが、スポーツの試合では、催眠時の変性意識状態に見られる時間の歪曲というものが観察されるようです。
これは、「シュート!」というサッカーのマンガで、試合の最初に1点を取り、その一点を最後まで守り抜く逃げ切りタイプの鶴ヶ崎学園高校が、漫画の主役である掛川高校の怒涛の攻撃を受けている場面で、自分たちが一点リードしているにも関わらず、「なんて長い45分なんだ」と呟くシーンがあります。
あるいは、スポーツに限らず、誰もが経験する、学校の試験。
もの凄い難問に引っかかり、何とか解こうと格闘している時、時計を見ると残り10分。
試験時間がやたら短く感じるのは、恐らく私だけではないでしょう。
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