イメージトレーニングで体の免疫力アップ
日本国内では正式には認められていないと思われますが、精神免疫学という医学と心理学の境界の分野があり、適切なイメージトレーニングを行えば、人間の免疫系に影響を与えることができる、というデータが過去より集まりつつあります。
体を外的脅威から守る防御役として主要な立場にある白血球の一種に「好中球」と呼ばれる一連の細胞群があります。
好中球は血液の中を循環しながらも一度、細菌・ウイルスが体の中に侵入してくると、血管の血管上皮細胞の間をすり抜け、さらに酵素を用いて基底膜を破り、血管外に這い出て侵入部位へ急行します。
血管外に出た好中球は組織内を遊走し、感染した部位に到達。
感染部位に到達した好中球は、最終的には細菌自身の産出物質(FMLP)や細菌と抗体との反応で活性化した補体成分をレセプターで感じ取り、細菌へ接触後、細菌類への接触から貪食を行い、飲み込んだ細菌類を殺菌する。
さて、この好中球の活動とイメージトレーニングの関係についていくつかのグループによって検討されました。
J・シュナイダー、W・スミス、S・ウィッチらは、自分の免疫系を意志によってコントロールできると信じている学生たちに、まず白血球がどう機能するのか教え、本物の好中球の顕微鏡写真を見せた。
この写真は、これに続く学生たちのイメージ・トレーニングの素材として使われることになる。
実際のイメージ・トレーニングでは、リラックスと好中球の活動を暗示するテープの音声を聞かせ、学生たちはイメージを描き、そのイメージを実際にスケッチさせた。
このようなセッションを6回行った結果、被験者は血流中を循環する好中球の数を増減させられることが分かった。
(Schneider,Smith & Witcher,1984)
H・ホールらは、好中球の数ある性質の中で、その付着性に注目し、付着性を高めるイメージ・トレーニングを行い、実際に好中球の付着性が高まることを実験的に実証した。
(Hall et al.,1992b)
実験の中身は次の通り。
まず、被験者たちは、好中球とその付着プロセスについての基礎的な説明を受ける。
次に、試料収集(血液の採取)の合間の30分間に被験者たちは、好中球付着の増加を促進する各自が考え出したイメージに集中するなどの訓練を行う。
例えば、ある女性は、自分の好中球をピンポン玉としてイメージし、そこからハチミツが滲み出て表面がベタベタになり、触れるもの全てにくっつく様子を想像した。
他の被験者たちも同様に、各自、好中球の付着という要素だけに集中するよう求められた。
一方、C・サイモントン博士が開発し、海外では広く普及している(らしい)、ガンの心理的治療アプローチ、すなわち、「サイモントン療法」では、正常細胞とガン細胞に対するイメージを「リフレーミング」するイメージ・ワークが実施される。
一般的に、ガン細胞に対する私たちのイメージは、様々なメディアの刷り込みにより、「強い」「破壊力ある」ものとしてとらえているが、サイモントン療法では、ガン細胞を「弱く」「うろたえた」もの、そして、ガン細胞を攻撃するNK(ナチュラル・キラー)細胞等の免疫細胞群を、獲物に襲い掛かるサメのように「強く」「たくましい」ものとしてリフレーミング(再構成)する。
ただし、サイモントン療法の場合、イメージ療法だけではなく、グループ・セラピー等の様々な療法が含まれているため、イメージ療法単独の効果を測定することはできない。
しかし、H・ホールの研究は、この方法が細胞の免疫力を高めることを明らかにした。
(Hall,1982-83/ Hall et al.,1992a,b)
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