質問の威力 (2)
今回は、話が長くなりそうだったので、前回に引き続き、「質問」に関する話題です。
前回は、人間の日常会話で用いられる「質問」には、場合により、スゴイ威力があり、クライアント(質問を受ける側)の考え方・行動の選択肢の幅を広げることが出来る、というお話でした。
なぜ、そんな事が可能かというと、「全ての質問には、”前提”が含まれている」ということに起因しています。
この質問に含まれる「前提」の内容は、会話(言葉)の中には明示されないので、クライアントの意識の判断を素通りし、心の深層部に直接埋め込まれて、クライアントの心理全体に影響を及ぼします。
例
「あなたは、昨日の夕飯に何を食べましたか?」
という質問には
「あなたは、昨日、夕飯を食べた」或いは「あなたは、昨日の夕飯に何かを食べた」
という前提が含まれている
例えば、「私は、部屋の整理が出来ない」という問題を持っている人が相談に来た場合、どうでしょうか?
この場合、よぉ~く考えると、この人は、すでに整理をする能力は身に付けているのですが(←どうしてか?という事については話が長くなるので、ここでは端折りますが。。。)、
ここで、相談された側が、「いいえ、もう、あなたには、整理をする能力は備わっているのですよ」と、そのまま言ってしまうと、相手は、「いいえ、絶対そんなことはありません」と否定して、相手の脳は「整理できない」という事を証明する実例を自動的に集めてしまい、その自分の信念・価値観を強化してしまう可能性が大でしょう。
そこで、「前提」を含んだ「質問」の登場です。
ここでは、相手が質問に答えるためには、自分ができないと信じていることを、逆に、出来ると思わないと、答えられないような質問を構築して、相手に投げかけてみます。
今回の場合のような質問は、答えるための「前提」に強く依存しており、相手が「整理できない」ということは出来ないように質問を組み立てるのがいいんじゃないかと思います。
では、実際に、どういった質問を相手にするか。。。?
その後の展開により、いろいろパターンがあり、「これが正解」というものはないと思うのですが、私だったら、「あなたは、いつ頃から、部屋の整理ができないと気付いたのですか?」と質問を組み立てるかもしれません。
この手のメタモデル的な質問は、相手の感情に迫るケースが多いので、私の場合は、予め、相手とのラポールを確立しておくのを大前提だと考えています。
さて、あなただったら、どういった質問を組み立てますか?
■「出来ないこと」は「出来ること」■
とある心理学の本を読んでいたら、その中に
とある心理学の大御所が
「人はいつも、本人は “出来ない”と思っていることが、実は、”出来るんだ”ということを示してくれる」
と述べている箇所がありました。
私は、最初、何を言っているのかサッパリ分かりませんでしたが、ウンウン考えて、最終的には、何とな~く、分かる気がしてきました。
例えば、こんな例は、どうでしょうか?
とある職場で、
上司
「A君、今回のこの仕事、キミに頼みたいのだが、出来るかな?」
A君
「ちょっと、私には難しすぎて、出来ませんねぇ~」
上司 「。。。」
普通、こういう時は、上司は、その仕事を違う人にふるか、無理矢理、A君に押し付けるかのどちらかでしょうが、よぉ~く考えてみると、A君は、上司から依頼された仕事をこなせる可能性が大だと私は考えます。
それは、何故か?
A君が「難しくて出来ない」と答えた一瞬前で、A君の頭の中では、頼まれた仕事を進めるシュミレーションをし、多分、それをこなす過程で、いろいろな障害が生じると予想し、それらの事柄を全てまとめた結果を総合して、言葉の上では、「できない」という一言で表現している可能性があります。
すなわち、A君の頭の中には、依頼された仕事の設計図は既にあって、あとは、A君としては、実務を進めるにあたり、その障害を1つずつ潰していけばいいだけです。
結局のところ、A君は、本当は、その仕事は出来るのであって、A君本人だけが「出来ない」と「思い込んでいる」だけだと考えられます。
もっと端的に言うと、「何で、”出来ない”という事が分かるのか?」という事です。
ですから、ここで、上司としては、ムッとしたりしないで、「じゃあ、具体的に”難しいこと”とは何?」と質問してあげるのが、いいもっていき方ではないかと私なら考えます。
あるいは、もっと直接的に、「どうして、”出来ない”と分かったの?」というのが、究極の質問ではないかと思います。
チョット見、言葉遊びのようにも見えますが、コミュニケーション時における、「質問」というものは、なかなか奥が深いナ~、と思った次第です。
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