たまたま (1)

本の表題そのものですが、とある別の目的で、

 「たまたま」:日常に潜む偶然を科学する

という本を買いました。

著者である、レナード・ムロディナウという方は、バリバリの理論物理学者であり、その経歴も非常に興味深いです。

本書は、純粋に確率論の話で、世の中の出来事は「偶然」により大きな影響を受けるので、未来は予測不可能だということを科学的見地から検証しています。

それがなんで心理学に?と思われるかも知れませんが、この本の冒頭に出てくる、著者の父親に関する記述が、非常に興味深いというか、脳の「思い込み」の力を実感できる話なので、私としては興味深く覚えたからです。

以下引用

父はブーヘンヴァルトのナチ収容所に入れられ飢えに苦しんでいた時、パン焼き場からパンを一切れ盗んだときのことを話してくれた。

パン職人は、ドイツ兵に、それとおぼしき者をしょっぴかせて整列させると、こう問いただした。「パンを盗んだのはどいつだ?」。

しかし、誰も答えなかったので、パン職人は護衛兵に、容疑者全員が死ぬか誰かが告白するまで容疑者を一人づつ撃ち殺すように言った。

父はほかの人間の命を救おうと前に進み出た。

自分を英雄のように見せようとしたのではなく、いずれにせよ撃ち殺されると思ったからそうした、と父は言った。

ところが、パン職人は護衛兵に父を殺させる代わりに、父に思いがけない仕事を与えた。

パン職人の助手だ。

「偶然の出来事だ」と父は言い、こうつづけた。

「それはお前とは何の関係もないことだったが、もし、展開が違っていたら、お前は生まれてこなかった」

このエピソードの前半までを読むと、後半は何かしらの悲劇的なストーリーが展開する、と予測する人もいるかもしれません。

これは、理論物理学者が書いた実話なので、場合によれば、「未来は予測できない」という事のメタファーにも役立つでしょう。

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