心理学から見たキューバ侵攻
「集団思考」のトラップ
歴史の教科書にも載っている(←多分)、アメリカと旧ソビエトとの冷戦化を決定的にした、キューバのカストロ政権を倒すための、アメリカによる「キューバ侵攻」。
事件は1961年に起こった。
この事件の詳細はここでは省くとして、この作戦はアメリカCIAが発案したものとはいえ、作戦の内容は支離滅裂なシロモノであったのだが、結果的には、実行されてしまった。
どうしてこんな計画が実行されてしまったのだろうか?
当時、アメリカの諜報機関CIAと軍部のリーダー達(統合参謀本部の構成員)が、フィデル・カストロを倒してキューバをもう一度アメリカの支配下に置くには、今しかないと、ある作戦を進言した。
当時のアメリカ大統領であったジョン・F・ケネディは、自らのブレーン達の助言を十分に精査した結果、作戦を承認した。
キューバへの上陸地点となったコチノース湾(アメリカ側は「豚」の意味から、勝手に「ビッグス湾」と呼んだ)は、キューバの中央、西南寄り小さな入り江である。
そして、4月17日に上陸した1400人のアメリカの勇者達を待ち受けていたものは、カストロの軍隊で、アメリカ軍は、わずか数日で全滅した。
その中で捕虜になったのは1200人、残りは戦死した。
一方のキューバ軍には犠牲者はなく、カストロの力はますます強くなった。
これを機に、キューバはモスクワにますます接近し、アメリカとソビエトの冷戦はますます強いものとなった。
集団による合議の誤りと大雑把な判断の寄せ集めが生んだ結果がこれだった。
CIAの諜報部は、キューバ国民が喜んでカストロ打倒に立ち上がるだろうと踏んでいた。
ところが、そうはいかなかった。
軍事専門家達は、万が一の時は山に逃げ込めばいいと考えた。
しかし、入り江と山との間には、何十キロもの沼地と砂丘が横たわっていたのに、それを勘定に入れていなかった。
この作戦が失敗した後、ケネディ大統領は、「私が全責任を取る」と述べたが、これは、世界の世論に後押しされた勇気ある行動だった。
しかし、恐らく、今回の事件についての責任は、ケネディだけが負うものではなかったかもしれない。
今回の事件を計画した時点で、「集団思考」のトラップに嵌り、それが計画の決定を左右したとも考えられます。
「集団思考」(group thinking, groupthink)
集団による合議が、不合理で危険な内容であっても容認してしまうこと。
「集団的浅慮」ともいう。
集団による決定が全て、「浅慮」な結果をもたらすと限らないが、強いリーダーが指導性を発揮し、取り巻き連中が「イエスマン」となる場合や、連帯意識や凝集(群れ)意識が強い集団が、外部の集団や勢力に対し、強い固定観念を持つ場合などに起きる。
- 自分達の集団に対する過大評価
- 閉ざされた意識
- 均一性への圧力
といった「集団思考」3類型により、次のような欠陥を生む可能性が大きい。
- 代替案を吟味しない
- 目標を精査しない
- 採用しようとする選択肢の危険性を吟味しない
- いったん否決された代替案を再検討しない
- 情報をよく探さない
- 非常事態に対応する計画を策定できない
といった点である。
このような集団の中で「自分を失わない」ことは、現実問題として、実際は非常に困難でしょう。
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