「心頭滅却すれば火もまた涼し」は本当?。。。かも
人の前頭葉には、痛みを抑えたり、基礎的な身体反応を変化させる働きもあるようだ。
こうした現象の好例として、自己啓発のための「火渡り」の流行が挙げられる。
たった数時間の講義だけで、特に神秘家でもない普通の人々が、2,3メートルから、長ければ10メートルをこえる約650度に灼熱した石炭の上を歩いてみせるのだ。
この主催者たちは、自己啓発の熱意と火の上を歩いたという体験とがあいまって、心身の深淵からの変容が起きるのだとさかんに力説している。
火や苦痛への恐怖心を乗り越えて、燃え盛る石炭の上を歩く勇気を得ることによって、どんな目標にも果敢に挑む自信がつくのだという。
熱い石炭の上をたった6メートル歩くことで内的な変容が引き起こされる、という考えには疑問が残る。
しかし、数千人もの人々が火渡りを実際に行ったという事実は否定できない。
そのほとんどは痛みも感じず、水ぶくれも出来なかったのだ。
懐疑的な人達は、いろいろな説明を試みている。
たとえば「ライデン・フロスト効果」と呼ばれる物理学上の現象で説明している者もいる。
それは、丁度、ロウソクの炎をつまんで消す前に予め、唾液で指を湿らせるのと同じように、薄い湿潤層が皮膚を水蒸気で炎から守る、という説明である。
火渡りの訓練でも、汗や皮膚についた水の層が、そのような保護層(参加者達は火渡りの前に湿った草の上を歩く)の役を果たすのかもしれない。
UCLAの物理学者バーナード・ライキンは別の説明を提示している。
火の中の石炭は、灼熱してはいるが密ではなく、したがって熱伝導率は低い。
だから、熱い石炭に足を踏み入れても、大量の熱が伝わって火傷になる前に、足が移動してしまうというのだ。
代替療法の専門家アンドルー・ワイル博士は、火渡りの内的な体験を探るために、火渡りを観察し、さらに自分でも数回試してみて、何度か水疱までつくったという。
彼は、ライデン・フロスト効果だけでは、その現象のすべては説明しきれないと指摘する。
例えば、彼に限らず、他の研究者たちも、人々は石炭の上を歩きながら、火渡りマントラ(「Cool Moss =冷たい苔」という言葉がよく使われる)を口ずさみ、一種の催眠トランス状態に没入しているようだと述べている。
ワイルは、「私は、人間の心理状態こそがもっとも重要な要素に違いないと確信しています。灼熱の石炭が熱さも感じさせず、炎症も起こさないというその体験は、機械論的な説明だけでは語り尽くせないでしょう。私の直感では、神経系が通常とは少し異なった形で機能しているのだと思います。それは、究極のリラックス状態と、全てを託しきった状態に何らかの関連がありそうです。」という。
ワイルはそれに付け加えて、「私がうまくやり遂げた火渡り(12メートル以上の灼熱の石炭の上を渡った)体験では、一種の変性意識状態(非日常的な意識のことで、瞑想時や心身統一時のいわゆるトランス状態よりも広い意味で使用される)に入ったように感じたし、その心理状態が自分を火の猛威から守ってくれたのかもしれない」と述べている。
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