感覚転移:なぜアイスクリームの容器は丸型なのか?

それは、同じアイスクリームであっても、丸型の容器の方が人は「美味しい」と感じるから。

その唯一の例外は、日本における四角い容器の「爽」シリーズでしょう。

この「感覚転移」という概念は、もともとは、アメリカにおいて、バーターの代わりにマーガリンが登場し、そのマーケッティングの調査から生まれた心理学的な現象です。

1940年代、アメリカ社会においてマーガリンはあまり人気がなかったようです。

これに対して、真剣に研究した一人のマーケッターがいました。

マーガリンが売れないのは、

  • 単に「マーガリンは不味い」だけなのか?
  • 人は何故、マーガリンが嫌いなのか?

を突き止めようとしたのです。

最初は、

  • 純粋なバター
  • バターのように黄色く着色したマーガリン

を比べたところ、明らかに「バターの方が美味しい」という評価でした。

普通なら、ここで「ヤッパリ、マーガリンはダメだ」ということになるのでしょうが、上記のマーケッターはさらに調査を進めたのです。

次の調査では、以下の2つを比較しました。

マーガリンを塗った2つのパンを試食してもらったのですが、その際、

  • 1つのパンは上記同様、黄色く着色した従来のマーガリン
  • もう1つのパンは、中身は同じでも、それに加えて豪華な包装で、かつ、アルミ箔で包んだマーガリン
    (当時、アルミ箔の包装は高品質の印だったようです)

を使用しました。

結果、圧倒的に後者のマーガリンが美味しいという結果が得られたのです。

あるいは、こんな例。

低価格帯のブランデーの市場で長年シェア一位をキープし続けた製品が、同業他社の市場二位の製品に追い抜かれてしまい、この会社がとある調査会社にリサーチを依頼しました。

この会社が言うには、今まで二位だった製品よりも、特に価格が高い訳ではないとの事。

この依頼を受けて、調査会社はある点に注目しました。

それは、今まで市場一位であった製品(以下、A社)のボトルは何の変哲・特徴のない形状だったのに比較して、逆転した会社の製品(以下、B社)のボトルは同じ低価格帯の製品であるのに関わらず非常に豪華な形状とデザインのボトルを採用していました。

そこで、調査会社は200人を対象として、ある実験を行ったのです。

内容は、どこにでもある商品名を伏せた飲み比べのテストですが、ちょっとヒネリを入れ、

  1. A社のボトル(特徴のないデザイン)にB社のブランデーを詰めたもの
  2. B社のボトル(豪華なデザイン)にA社のブランデーを詰めたもの

の比較です。

結果、「2.」の方が美味しいと判断した人が圧倒的でした。

食品(この場合は飲料)のパッケージが人の味覚に影響を与えるという明瞭な実験例です。

その他、

  • 中身は同じセブンアップなのに、パッケージの色調を変えたら、「味が変わった」というクレームを受けた
  • パッケージに写真ではなく、マンガを使うと味が落ちたと思われる(当然、中身は同じ)
  • デルモンテが桃を缶ではなく、ガラス瓶に詰めたら「おばあちゃんが作ってくれたのとソックリ」という人が何人も現れた。
    ガラス瓶入りの方が美味しいという評価が出た。

この調査会社が担当した感覚転移の極め付けが、中身は同じアイスクリームなのに、四角い容器から丸い容器に変更し、かつ、値段も5~10セント値上げした、という例です。

調査会社の担当者が言うには、

(中身は同じでも)丸型パッケージに入れたアイスクリームの方が美味しい、という理由で、多少高くなっても客は喜んで買ってくれる

との事のようです。

舞台裏を知っていれば詐欺同然とも思われるテクニックですが、何も知らない当人にとっては、「幸せならばそれでいい」というところでしょうか?

ただし、調査会社が言うには、「本当に美味しくない商品をパッケージで誤魔化すことは出来ない」との事。

以上はアメリカの例ですが、日本の例として思い当たるのは、大都市圏で時々見かける、「ステラおばさんの焼いたクッキー」。

NLP的に突っ込むとすれば、「ステラおばさんっていうのは、具体的には誰なのか?」ということになるのでしょうが、このネーミングにより、ありきたりのクッキーでも、多くの客は「美味しい」という判断をするのでしょう。

この感覚転移という現象は、集団の心理を操るテクニックの一つで、いかに人の主観というものがアテにならないかを示す一例と言えるかもしれません。

また、視点を変えると、この感覚転移という現象は、心理学の分野でよく耳にする「ハロー効果」と通じている部分があるかもしれません。

例えば、アインシュタインが

神はサイコロを振らない

という言葉を残していますが(とされていますが)、同じ言葉を冴えない中年サラリーマンが言っても、「何ソレ?」ということになるでしょう。

様々なメディアてお目にかかる、

  • アインシュタインが×××と言った、だから(And)~
  • あのスティーブ・ジョブスが△△△と言った、ゆえに(And)・・・

という表現。

これなどは、ハロー効果を利用した、一種のエリクソン催眠・現代催眠のテクニックの一つと言えるかもしれません。

NLP的な視点ですと、

  • 本当に、アインシュタインやスティーブ・ジョブスがそのような事を言ったのか、実証不可能。
    にも関わらず、それが「絶対的な事実」であるように使われている。
  • 引用した言葉と、「だから~」「ゆえに・・・」に続く内容は関係ない事が多い。
    しかし、それが発言者が相手を誘導したい内容でもある。

このような引用に用いられる言葉の殆どのケースが、「故人の言った言葉」である点は興味深いところです。

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