NLP:日常的な会話・文章に含まれる「隠れた前提」

「日常会話にはエリクソン催眠的要素が数多く見られる」

現代催眠の開発者であるミルトン・エリクソン博士は、クライアントとの会話の中に、様々な「前提」をクライアントの意識に気付かせることなく含ませて、無意識の領域に自分が伝えたいメッセージを届けることによりセラピーを行う場合もありました。

一番典型的な形式は、「質問」です。

セラピストの質問に答えるということは、その質問に含まれる様々な「前提」をクライアントは受け入れなければなりません。

これは、セラピーの例ではありませんが、日常的に用いられる質問として、

  「今日の夕食は、居酒屋にする?ファミレスにする?」

  「今晩の夕食は何がいい?」

という質問を発した場合、この質問の前提には、

  「今日の夕食は、私と一緒にする」

という内容が隠れた「前提」として含まれています。

NLPやエリクソン催眠のセッションにおいては、うまく、この「質問の中には必ず前提が含まれる」という性質を利用して、適切な質問をクライアントに発して、クライアントの問題解決や、目標の達成をサポートしていきます。

また、このようなセラピーやコーチングといった特殊な状況に限らず、私達の日常会話や、様々なメディアの文章の中にも、このような「前提」が隠れた形で用いられています。

  • 事実に関する隠れた前提

    (例文)
    クジラは仲間との間で、何かしらの方法により、お互いにコミュニケーションを取っているが、その詳細については不明である。

    一方、イルカについては、そのコミュニケーション方法について明らかにされつつあるので、さらに詳細にイルカについて詳細に調べれば、クジラのコミュニケーションについても明らかにされるであろう。

    何故なら、クジラもイルカも海洋に生息する哺乳類であるからだ。

    以上の文章は、事実に基づいたもっともらしい文章ですが、前提がいくつか含まれています。

    前提

    • 生態・生物分類学上で似ている動物は、コミュニケーション方法が似ている
    • クジラとイルカは似ている
    • だから、クジラとイルカのコミュニケーション方法は類似している
  • 価値判断に関する前提

    「ニンジンは赤い」は単純な事実。

    「ニンジンは健康に良い」は価値判断。

    (例文)
    オオアルマジロは絶滅の危機にある哺乳類の1つである。
    従って、私たちはオオアルマジロを絶滅から救わなければならない。

    前提

    • オオアルマジロは絶滅の危機に瀕している
    • 私たちは、絶滅の危機に瀕している動物を救わなければならない <- 価値判断

    これは、その価値判断を当然と思っているほど、その文章に埋め込まれた前提の存在に気が付きにくい一例です。

    分かりやすい目安としては、「~しなければならない」「~するべきだ」等の、「モーダルオペレータ(叙法助動詞)」が表現の中に存在するかどうかがあるでしょう。

    そして、この前提を打ち破るメタモデル的な質問の一つが、

    「仮に、それをしないとするとどうなりますか?」

    が挙げられます。

  • 言葉の定義に関する前提

    (例文)
    待ち合わせの時間に相手が来ない場合、ある程度の時間待てば、その場から立ち去ってもよい。
    私は、30分も待ったので、その場を去った。

    前提

    • 30分と言うのは、十分な時間である。
    • この例の場合、「ある程度の時間」の定義が明確でない。

    すなわち、Aさんにとっては、「30分」は「十分な時間」かもしれないが、Bさんにとっては、「まだまだ短い時間」かもしれない。

  • 物事の評価に関する前提

    (例文)
    「Aさんは、とってもやさしい。何故なら、自分の手が空くと、私の仕事を手伝ってくれる」

    「B君は、ガンバリ屋だ。毎日のように遅くまで職場に残って仕事をしている」

    前提

    • 自分の仕事を手伝ってくれる = 「やさしい」
    • 毎日のように残業をする = 「ガンバリ屋」

大まかに「前提」について分類すると、以上のようなところでしょうか?

これまでの説明だけだと、前提というものは、ある意味、「悪者」という印象があるかもしれませんが、この前提というものは

  • コミュニケーションを行う中で、必須のものであり、避けては通れない
  • すなわち、育ってきた環境や文化の中で、共通認識としての前提を用いることにより、コミュニケーションの冗長化を防ぎ、コミュニケーションをスムースにする

という面があることを認識しておくことは損ではないでしょう。

以上は、どちらかと言うと、教科書的な内容でしたが、以下は、実際のニュースの例です。

一体、どのくらいの前提が含まれているのでしょうか?

以下、Yahoo! ニュースからの引用です。

———-

高齢化問題、増田元総務相「一番深刻なのは東京」

TBS系(JNN) 5月3日(土)13時38分配信

増田元総務大臣は、TBS番組「時事放談」の収録で「高齢化問題が一番深刻なのは東京だ」と指摘し本格的な対策が必要だと強調しました。

「(高齢化問題が)一番深刻なのは東京で、75歳以上は30年たつと2倍近くに。20代30代は40%少なくなって、そのときにどういう姿になるのか。介護施設はこれ以上作れないが担い手すらいなくなる」
(増田寛也 元総務相)

厚生労働省の試算では、75歳以上の高齢者は10年後に東京で1.6倍となるなど首都圏が深刻で、増田氏は対策を急がなければならないと強調しました。

(引用終わり)
———-

ツッコミどころは満載ですが、例えば、その1つとして、

「対策を急がなければならない」

    ↓

「対策って具体的には何ですか?」

「急がなければどうなるのですか?」

といったところでしょうか?

上記のニュースの文章で、エリクソン催眠的な立場でみるところの、「絶対的な事実」「立証可能な事実」は

  • 増田元総務大臣は「○○○・・・(内容は省略)」ということを言った
  • 厚生省は「○○○・・・(内容は省略)」について試算した

という2点だけだと私なら考えます。

そして、「○○○・・・」の内容は、一見もっともらしい事実のように見えますが、上記の前提の一種と考えます。

その他の箇所については、各々ということで。。。

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