質問の威力 (1)

今回は、「質問」の持つ心理学的な威力について考えてみたいと思います。

「質問」というと、学校の時、先生が「今の説明に対して何か質問はありませんかぁ~」という類のモノを思い出しますが、それよりも、遥かに内容が濃いヤツです。

先ずは、簡単な例から。。。

このようにブログで書いた文章だとイマイチ現実感が乏しいのですが、例えば、知り合いとの会話の中で、

「あなた、昨日の昼食に何を食べた?」

という質問に対して、あなたは、

「蕎麦だよ」

と答えたとします。

こんな会話なんて、日常茶飯事だと思うのですが、この質問の中には、実は、重要な要素が隠されているのです。

それは、「あなたは(自分)は、昨日、昼食に何かを食べた」という「前提」が隠されている(埋め込まれている)のです。

これ以降もそうですが、人間が質問をする時には、その質問には必ず「前提」が含まれています。

また、答える側も、その質問に答えて、さらに言葉にする(言語化)には、脳の中の無意識の領域で、複雑な処理をしなければならない場合があります。

そして、この質問の2番目の性質を利用して、質問によってセラピストがクライアントに対して、無意識のうちに変化を起こさせることが可能になります。

上に書いた、昼食の蕎麦の話は簡単すぎますが、ちょっと込み入った、こんな質問はどうでしょうか?

「あなたが今まで生きてきた長い人生の中で、これまでどれだけ沢山の事を学んできたか、今そのことに気付いていますか?」

ちょっと、哲学的で、小難しい質問ですが、ここでネタを明かすと、この質問の答えは、「はい」でも「いいえ」でもどちらでもいいのです。

よ~く考えてみると、この質問に答えるためには、無意識下で、脳の中に蓄積されている、今まで経験してきた全てのことの情報に、(一瞬で)アクセスしなければ、答えることができないのです。

あと、もう一つの例です。

上記の質問を少し改良して、

「あなたが今まで生きてきた長い人生の中で、これまでどれだけ沢山の事を学んできましたが、具体的に、そのうちの”いくつかを”挙げてくれませんか?」

当然、質問された相手は、その「いくつか」を言葉にして話すでしょう。

ただし、ここでも、上の質問には、2つの強力な前提が埋め込まれているのです。

1つは、「あなたは、これまでの人生で沢山の事を学んできている」という前提です。

そして、もう一つは、相手が答えた「いくつか」の他にも、相手が学んだことはそれ以上にあるのだ、という事です。

この、「いくつか」という単語を質問の中に入れないとクライアントとは、「1個の」事例しか挙げない可能性があります。

因みに、私の場合は、特に根拠はありませんが、具体的に「3つ」と個数を指定しています。

そして、今は、質問に答えたことしか意識に上らないかもしれませんが、この質問に答えた以降、これから、時間が経つにつれてさらに多くの事柄が意識に上ってくるかもしれません。

すなわち、上記の質問は、見方を変えると、クライアントの可能性を広げる質問となっているとも考えられます。

もし、上の質問で、「学んだ事はいくつですか?」とした場合、質問を受けた相手の可能性は、答えた数だけに限定されてしまい、その他にも沢山あるのだ、ということに意識が向かなくなってしまいます。

あと、ここで、オマケ的に「イロイロな前提が入り込んだ相手の可能性を広げる質問」というモノを、1つ考えてみたいと思います。

(やはり、ここでも、最終的な相手の答えが、「はい」でも「いいえ」でも、どちらでも構わないのです)

「あなたは、人の役に立つ行動を起こす事に興味がありませんか?」

→前提

  • あなたは、人の役に立てるのだ
  • あなたは、何らかしらの行動を起こすことのできる人間だ

「あなたは、過去の経験にプラスして、今から新しいスキルを習得して、人の役に立つ行動を起こす事に興味がありませんか?」

→前提(上記の前提プラス)

  • あなたの過去の経験には、人の役に立つモノがある
  • あなたは、今からでも新しいスキルを習得する能力がある
  • あなたは、過去の経験と、新しいスキルとを合体させ、人の役に立つ何かを創造することができる

何だか、堅苦しいというか、チョット変な日本語になってしまいましたが、私の言いたいコト、あるいは、ニュアンスは、分かってもらえるんじゃないかと思います。

実際には、プロのコーチや、トレーナーなんかは、現場では、もっと自然な(日本語の)会話でクライアントに質問をして、クライアントが抱えている問題を解決していくみたいです。

これは、ある意味、「魔術」と言っていいかもしれませんが、このようなセッションを行っていくと、今までクライアントが「問題」だと思っていたものが、実は「問題ではなかった」という事に認識を変えるみたいです。

ここまでくると、ある意味、言語学の世界ですが、本当に「言葉」というモノは不思議なものだナ~、とつくづく思います。

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